交通事故の被害者となった場合、車やバイク・自転車などが壊れてしまうことはもちろん、けがを負うこともあります。けがも程度がひどいと、後遺障害が残り、後々の生活にまで影響が出る場合もあるでしょう。この「後遺障害」は非常に厄介なものであり、人生プランそのものを大きく変えてしまうものでもあります。
後遺障害は、いくらお金を積まれても治るものではありません。
しかし償いはお金でしかできませんし、生活を建て直す(あるいは生活を送っていく)ためにはお金も必要です。
そのため、後遺障害の状態に応じて、慰謝料などが払われるようになっています。
交通事故で後遺障害が残った場合の等級
交通事故で負傷し、治療はしたものの後遺障害が残ってしまった場合、それだけで当然に、後遺障害に関して損害賠償をしてもらえるわけではありません。
後遺障害に関して損害賠償を請求するには、原則として、後遺障害について、後遺障害等級が認定される必要があります。
この点、後遺障害が残っているという自覚症状があるにもかかわらず、等級が認められずに非該当になってしまう場合もあります。
たとえば「本人は痛いと思っているが、画像検査では異常が認められないムチウチ」などがその代表例です。
ただ、画像の検査では異常が認められなくても、通院状況や神経学的テストを実施した結果などから、後遺障害等級が認定されることもあります。
後遺障害の等級は、14段階に分けられています。
そのすべてを網羅して書くことはできませんから、ここでは代表的なものだけ紹介します(別表第2の場合)。
第一級……両目の失明
第二級……片目が失明、もう片方の視力が0.02以下
第三級……咀嚼機能あるいは言語機能が失われた
第四級……両耳の聴力が完全に失われた
第五級……片方の上肢を、手関節以上で失った
第六級……両耳の視力が0.1以下になった
第七級……両足の足指が、すべて用を成さなくなった
第八級……片方の足の指がすべて失われた
第九級……生殖器に、大きな障害が残った
第十級……耳元で大声を出さなければ耳が聞こえない状態になった
第十一級……胸腹部の臓器に障害が残り、仕事に支障が出る状態になった
第十二級……局部に、強い神経症状がある
第十三級……胸腹部の臓器に障害が残った
第十四級……上肢や下肢の、人に見える部分にてのひらサイズの醜い傷が残った
ここで紹介したのはあくまで一例です。またけがの程度は人それぞれ異なりますから、これを基準とし、それぞれのケースで判断されていきます。
等級が認められた場合の損害賠償、自賠責保険
後遺障害が残った場合、被害者は加害者に慰謝料を要求することができます。
この「慰謝料」は、「逸失利益とは~交通事故により後遺障害が残った場合」で紹介した「逸失利益」とは区別されるものです。慰謝料と逸失利益は、「後遺障害の等級を元に計算する」という原則は同じではありますが、それぞれ別個に求められます。そのため、
・後遺障害が残ったことによる慰謝料
・後遺障害が残ったことにより発生する逸失利益
の両方を請求することができるわけです。「後遺障害慰謝料をもらったから逸失利益の分は請求できない」「逸失利益の分を支払わせるから、後遺障害慰謝料は諦めなければならない」ということはありません。
自賠責保険によって、後遺障害が残った場合について保険金が支払われます。自賠責保険は、車を持つすべての人が入らなければならない保険です。任意保険に入っていない相手が起こした事故であっても、自賠責保険によって最低限の補償がなされるわけです(ただし、現在はほとんどの人が任意保険に入っています)。
等級(別表第2の場合) | 保険金額 |
第一級 | 3000万円 |
第二級 | 2590万円 |
第三級 | 2219万円 |
第四級 | 1889万円 |
第五級 | 1574万円 |
第六級 | 1296万円 |
第七級 | 1051万円 |
第八級 | 819万円 |
第九級 | 616万円 |
第十級 | 461万円 |
第十一級 | 331万円 |
第十二級 | 224万円 |
第十三級 | 139万円 |
第十四級 | 75万円 |
加害者は自賠責保険に入っているはずですから、最低でもこの金額が支払われることになります。
後遺障害が残った場合は弁護士に相談を
上でも述べましたが、後遺障害の認定というのは難しい面があります。同じけがは二つとしてありませんし、それぞれのケースに応じて判定していくことになります。もちろん第一級ならば争う要素はありませんが、それ以外の場合は、「こんなに状況が悪いのに、なぜ軽い等級でとどまってしまうのか」「こんなに痛みが強く、また長く続いているのに後遺障害として認められないのか」などのような問題が出てくることもあります。
「後遺障害の等級」は、一時的な「慰謝料」だけでなく、「将来において得るはずだった逸失利益の金額」にも関わってきます。
逸失利益は「今までの収入×67歳までの年数(※ほかにも利息の要素も絡んできます)×後遺症(後遺障害)の等級に応じた労働能力喪失率」で求められます。
なお、後遺障害等級について非該当と判断されると、原則として後遺障害慰謝料も逸失利益も認められないことになります。
このため、「適切に後遺障害の等級を認定してもらうこと」は非常に重要です。また、間違った等級で認定されてしまった場合は、それを是正する必要があります。
このときに頼りになるのが「弁護士」です。
弁護士は、後遺障害の等級認定に関わり、後遺障害の等級獲得のために動きます。また、万が一間違った等級とされていた場合は、その是正のために動きます。これらは専門知識とノウハウがなければ難しいことです。「自分は不満があるが、丸め込まれてしまいそうだ(あるいは丸め込まれてしまった)」という場合は、ぜひ弁護士事務所の門を叩いてください。
弁護士に依頼するときにはお金がかかりますし、また勇気も必要となるかもしれません。しかし弁護士に依頼するか否かで、受け取れる金額が数百万円近くも変わってくることもあります。後遺障害が生じた体にとって、「お金」は安心を買うための大切な道具となります。弁護士はその大切な道具を獲得するためのお手伝いをします。